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大阪高等裁判所 平成6年(行コ)90号 判決

アメリカ合衆国カリフォルニア州マリーナデルレイ市

マリーナシティ通り四三三五番地八四六号室

(居所)奈良県生駒郡三郷町立野南二丁目九番三八号

ホテルバンガード三郷

控訴人

池田育弘

奈良県大和高田市西町一番一五号

被控訴人

葛城税務署長 高橋敬治

右指定代理人

川口泰司

的場秀彦

前川典和

西川裕

西仲光弘

西教弘

中村美彦

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  本件訴訟の趣旨及び理由

別紙控訴状(写し)に記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  控訴人が本件訴えにおいて主張する請求の趣旨、原因は次のとおりである。

(一)  請求の趣旨

控訴人の平成四年三月一六日付け平成二年度修正申告の納税管理人選出届が無効であることを確認する。

(二)  請求の原因

(1) そもそも、納税管理人とは、国税通則法一一七条において定められているように、日本国内に居住しない納税者に代わって、納税申告書の提出、その他国税に関する事項を処理するものである。

(2) 控訴人は、税理士和田健を控訴人の納税管理人に選任したこともなければ、その旨の選出届に署名、捺印したこともない。また、同人に平成二年度の修正申告書の作成を依頼した覚えもない。

(3) ところが、控訴人が知らない間に、右和田健を控訴人の納税管理人とする請求の趣旨記載の平成四年三月一六日付け平成二年度の修正申告書等が北葛城税務署に提出され、控訴人は、これに基づいて、現実に身に覚えのない納税を請求されている。

(4) 控訴人の権利または法律的地位には、右のような危険、不安が現存しているところ、その危険、不安を除去する方法としては、被控訴人との間で、請求の趣旨記載の判決を得ることが有効適切である。控訴人が、本件において民事訴訟法上の「確認の権利」を有することは明白である。

(5) よって、請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

2  民事訴訟は、基本的に、規律する対等者間の権利関係に関する紛争を対象とするという観点からすると、右のような請求の趣旨、原因からなる本件訴えを一般民事訴訟と理解できるかどうかは疑問である。

また、仮に、これを一般民事訴訟としての確認訴訟であると解することができるとしても、控訴人主張の選出届の無効を確認することが、その主張のような危険、不安を除去することになるとは考えられない(もし、控訴人が、その主張の修正申告に基づく身に覚えのない納税請求を免れたいというのであれば、端的にその趣旨の行政訴訟を提起すべきである)。

3  そうすると、控訴人の本件訴えは、訴訟要件としての即時確定の利益を欠く不適法なものであり、一般民事確認訴訟としてはその欠缺を補正することができないものというべきであるから、民事訴訟法二〇二条により、これを却下すべく、原判決は結論において正当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法八九条、九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上野茂 裁判官 山﨑杲 裁判官 上田昭典)

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